森庄銘木産業株式会社 吉野北山磨き丸太専門メーカー 性能表示付き優良材
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奈良県が誇る日本の伝統産業探訪(建築士会「SHIKAI NARA 2010」に連載)
『吉野杉・磨き丸太』A
今回は、吉野産の磨き丸太の生産工程についてしらべてみました。すると、ほんと、手間ひまかけて手作りしていることが良く分かりました。
吉野産磨き丸太の搬出
磨き丸太は以前は9月の彼岸明けの頃に伐採していましたが、地球温暖化の影響もあり1カ月遅れて10月後半から11月にかけて伐採します。もちろん上向きに伐ります。枝葉を付けたまま1〜2カ月のあいだ山に放置し、葉から内部の水分を蒸散させることで含水率がずいぶん減り、搬出作業や、のちの乾燥過程で大きな効果が得られます。これを「葉枯らし」と言います。
搬出時は、所定の長さに玉切りし、林地の状況により肩で担いで出すか、索道や小型発動機付き荷車(キャタピラ)で出すかですが、最近ではヘリコプターでの出材も珍しくありません。ヘリコプターの搬出費用は高くつきますが、長尺物でも道のない山の上からも傷つけることなく短時間(2,3分)で運び出すことができます。
生産工程
土場に運ばれてきた原木はそのほとんどは水圧の機械により皮?します。すると、荒皮としぶ皮がきれいに取れてしまうので昔から行っていた小ムキ作業が不必要になりました。きれいに?けたら次は背割です。背割は乾燥にともなって材の表面が収縮するために起こるヒワレを防ぐために実施されるもので、丸鋸またはチェンソーで丸太の芯まで割れ目を入れます。背割の箇所は、丸太の木の反り具合や欠点のある場所を選んで入れますが、これを間違うと製品の値段に大きく影響するので慎重に行います。それから天日干しを1週間から10日ほど行います。すると、表面が白く磨き丸太独特の色艶が出てきます。その後は、倉庫内で天然乾燥を施します。以前は人工乾燥に頼っていましたが、品質的にもまた経済的にも天然乾燥が見直されています。
磨き丸太の種類
磨き丸太といっても用途や、加工技術によってさまざまな種類があります。
@磨き丸太…和風住宅の玄関ポーチの柱や室内の天井棟木、手摺、霧除(きりよけ)、床框などで多く使われ、最近ではリビングや玄関ホールの飾り柱として使用されることも増えてきました。
A絞り丸太…和室の床柱に広く使われているもので、表面の凹凸のでき具合が自然か人工的かにより「天然絞り丸太」「人工絞り丸太」と呼ばれています。
B海布丸太…玄関の化粧垂木に使われている小丸太で、最近では手摺にも多く使われています。
C桁丸太…玄関の庇の桁に使う丸太で、角モノに比べ強度も優れ、見た面も高級感があります。
D面皮柱…数寄屋建築・お茶室に使われる磨き丸太を4面落とした柱で、直材、無節が要求されるため手入れの行き届いたものでないと造れません。以前はチョンナではつっていましたが、現在では機械ハツリが主流です
天然乾燥へのこだわり
最近の住宅事情を考えると、磨き丸太も価値観が変わってきているように思われます。
昔から磨き丸太の良材の条件として真円、通直、無節、木膚の光沢などが挙げられますが、気密性重視の住宅が増えてきており、乾燥ということにも強く意識して取り組まなければなりません。
構造材もKD材が当たり前になり、磨き丸太だけがグリーン材で良いはずがありません。昨年から弊社の取り組みが「経済産業省の『地域資源活用計画』の認定」をいただき、さらに天然乾燥のよさをアピールするべく色々な試験を奈良県森林技術センター様と共同で実施いたしております。たとえば、「葉枯らし」と丸太の乾燥との関連性についてや、土壁乾燥棟内外の環境の違いによる温度・湿度の変化と丸太の重量・含水率との関連性について等でして、分析結果が待ち遠しいです。
現状のJAS規格によれば、ヤング係数による強度性能と含水率が表示されておりますが、耐久性能については触れられておりません。日本のような四季のある国で、集成材のような耐久力の乏しい材料を使った建築が多数を占めている現状に非常に危機感を覚えます。
もしかしたら、法隆寺や唐招提寺等に代表される歴史的建造物はこの先さらに数百年後も現存してるでしょうが、平成になってから建てられたプレハブ住宅は、この先たった30年後、現存して家として機能しているのでしょうか?
日本の今の住宅事情が心配です。
記・森庄銘木産業椛纒\取締役 森本定雄】
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